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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)10348号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔説明〕原告島屋商事株式会社の従業員である原告金丸は、第二種原動機付自転車を運転して業務に従事中、被告運転の普通乗用車と衝突して負傷した。原告会社は、(1)原告金丸の入院治療費、付添看護婦料と付添人用ふとん借受料、(2)原告金丸の休業期間中の給料、夏季手当の一部を支払つていたので、(1)については「右支出は労働基準法七五条一項に基づくものと解されるので、民法四二二条の類推により原告会社は原告金丸に代位して被告に対する右同額の損害賠償請求権を取得した」と主張し、(2)については「被告はその不法行為により原告金丸の原告会社に対する労務の提供を不可能にしたものであるから(いわゆる債権の積極的侵害)」と主張して、被告に対しその損害の賠償を求めた。判決は、次のように判示して原告会社の請求を認容したのであるが、原告会社主張の法律構成を採用したものではなく、その理由とするところも必ずしも明らかでないが、原告会社の(1)、(2)の支出をもつて被告の原告金丸に対する不法行為(自賠法三条)と相当因果関係に立つ損害であると解し、原告会社に直接の損害賠償請求権を認めたものであろうか。使用者が就業規則によつて休業中の労働者の生活費を支払つた場合に、これを事故による通常の損害と解した東京地判昭和三八・一二・二三(本誌一五六号二〇九頁)が参考になろう。

〔判決理由〕<証拠>によれば、原告金丸は原告会社の従業員として原告会社の業務に従事中本件事故にあつたものであること、原告会社は原告金丸の入院治療費、付添看護婦料および付添人用ふとん借料金として原告主張の金二六五、三三九円を下らない金額を支出したことが認められ、その後労災保険から給付のあつた療養補償金一四二、一四二円を原告会社が受領したことは当事者間に争いがない。してみれば原告会社が右両者の差額金一二三、一九七円の損失をこうむつたことは明らかである。

(2) <証拠>によれば、同原告は本件事故のため昭和三七年三月八日から同年八月末日まで原告会社における労務の提供ができなかつたが、その間原告会社は同年三、四月分として所定給料月額一六、〇〇〇円の各金額、五月ないし八月分として各その半額、さらに夏季手当として金一〇、〇〇〇円合計金七四、〇〇〇円を支払つたことが認められる(これ以上の給料を支払つたことを認むべき証拠はない)。そうだとすれば原告会社は、同年三月中労務提供のあつた日数相当分として原告の自認する金五、三三四円ならびに労災保険から給付され原告会社の損害填補にあてられた休業補償金二六、九〇四円(この点は当事者間に争いがない)を前記支払額から控除した残額金四一、七六二円に相当する損失をこうむつたということができる。

原告会社の右(1)(2)の支出が労働基準法七五条、七六条ないし社内規約に基づくものであることは<証拠>によつて明らかであるから、かかる場合原告会社は前記損失の限度において被告に対しその賠償を求めることができると解すべきである。

五、被告が主張するように、原告金丸にはさきに認定した重大な過失があるから、これを考慮して前記三の金額を大幅に削減し、結局同原告の受くべき慰藉料の額は金一五〇、〇〇〇円とするのが相当である。

さらに原告会社の請求についても原告金丸の右過失を斟酌し、原告会社は前記四(1)(2)の損害合計金一六四、九五九円のうち、金七〇、〇〇〇円の限度で被告に賠償を求めうるものとするのが相当である。(楠本安雄)

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